実家じまい、空き家の管理費どうする? 知っておきたいお金の話
実家じまい、空き家の管理費どうする? 知っておきたいお金の話
人生百年時代と言われる今、ご自身の住まいだけでなく、ご両親から受け継がれる実家など、空き家となる不動産について考える機会が増えています。特に年金生活に入ると、それまでとは違う視点でお金と向き合うことが多くなります。空き家となった実家や相続した不動産について、「このままで大丈夫だろうか」「管理にはどれくらいお金がかかるのだろうか」と漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、空き家を所有することによって発生するお金の話を中心に、その維持にかかる費用や税金、そして将来どのようにしていくかの選択肢について、知っておきたい基本的な知識をお伝えします。
なぜ空き家が増えているのでしょう?
近年、日本の空き家は増加傾向にあります。主な理由としては、親から子への相続後、誰も住まないままになってしまうケースや、施設への入所、住み替えなどが挙げられます。特に地方においては、この傾向が顕著です。
空き家を所有していると、たとえ誰も住んでいなくても、様々な費用が発生します。そして、適切な管理が行われない空き家は、地域の景観を損ねたり、防犯・防災上の問題を引き起こしたりすることもあります。そのため、行政も空き家対策に力を入れ始めており、所有者にかかる責任も大きくなっています。
空き家を所有していると、どんなお金がかかるのでしょう?
空き家を所有し続ける場合、主に以下のような費用がかかります。
1. 税金
不動産を所有している限り、毎年「固定資産税」と「都市計画税」がかかります。これらの税金は、土地と建物の評価額に基づいて計算されます。
- 固定資産税: 毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課税されます。税率は原則として固定資産税評価額の1.4%ですが、自治体によって異なる場合があります。
- 都市計画税: 市街化区域内にある不動産に課税されます。税率は原則として固定資産税評価額の0.3%ですが、こちらも自治体によって異なる場合があります。
自宅として使用されている土地には、固定資産税の「住宅用地の特例」が適用され、税負担が軽減されています。しかし、建物が老朽化して自治体から「特定空家等」に指定されてしまうと、この特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍になってしまう可能性があります。適切な管理がなされていない空き家は、税負担が増えるリスクがあることを知っておくことが大切です。
2. 管理費用
空き家を良好な状態に保つためには、定期的な管理が必要です。管理を怠ると、建物の劣化が進み、将来的な修繕費用が高額になったり、売却が難しくなったりする可能性もあります。
管理費用には、以下のようなものが含まれます。
- 定期的な換気や清掃: 建物内の空気を入れ替えたり、簡単な清掃を行ったりします。自分で行う場合は時間や労力が必要です。
- 庭の手入れ: 庭木の剪定や草むしりなどを行います。伸び放題になると近隣に迷惑をかけたり、害虫発生の原因になったりします。
- 建物の点検と修繕: 雨漏りや外壁の劣化などがないか確認し、必要に応じて修繕を行います。
- 光熱費: 水道管の凍結防止や湿気対策のために、電気や水道を契約したままにしておく場合があります。
- その他: 郵便物の整理や、台風などの後の見回りなども必要です。
遠方に住んでいるなどで自分で管理が難しい場合は、専門の管理会社に委託することもできます。その場合、委託費用(一般的には月数千円から)がかかります。
3. 火災保険料
空き家であっても、万が一の火災や自然災害に備えて火災保険に加入しておくことが望ましいです。保険料は建物の構造や所在地によって異なりますが、年間数万円程度かかるのが一般的です。
空き家をどうするか? 選択肢とお金
空き家にかかる費用を知ると、「このまま持ち続けて大丈夫だろうか」と考えるかもしれません。空き家に関する将来的な選択肢はいくつかあり、それぞれにかかるお金や得られるお金が異なります。
1. そのまま所有し続ける
現在の状況を維持する選択肢です。上記の税金や管理費用がかかり続けます。将来的に自身や家族が使う可能性がある、今は忙しくて手が回らない、などの理由で選ばれることがあります。しかし、費用負担に加え、建物の老朽化や法改正(特定空家等指定など)のリスクもあります。
2. 賃貸に出す
空き家をリフォームするなどして、賃貸物件として活用する方法です。家賃収入が得られるため、管理費や税金の負担を賄える可能性があります。
- かかるお金: リフォーム費用(賃貸向け改修)、仲介手数料、不動産会社への管理委託費用など。
- 得られるお金: 家賃収入。
- 考慮点: 入居者が見つかるか、入居者とのトラブル対応、修繕の必要性など。固定資産税の住宅用地特例は継続できる可能性があります。
3. 売却する
空き家を売却して現金化する方法です。まとまったお金が得られるため、今後の生活資金や別の資産運用に充てることができます。
- かかるお金: 不動産会社への仲介手数料(売却価格の3%+6万円程度)、測量費、登記費用、譲渡所得税(売却益が出た場合)。
- 譲渡所得税は、所有期間や用途(居住用だったかなど)によって軽減措置が適用される場合があります。相続した空き家に関する特例もありますので、詳細は税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
- 得られるお金: 売却代金。
- 考慮点: 希望通りの価格で売却できるか、買い手が見つかるまでの期間。建物の状態によっては解体して土地として売却する方が良い場合もあります。
4. 寄付・自治体への相談
自治体や個人・団体への寄付、または自治体の空き家バンクに登録して活用を促す方法です。
- かかるお金: 原則として費用はかかりません。ただし、寄付の場合は相手が引き取りやすい状態にするための費用(登記費用など)がかかることもあります。
- 得られるお金: 基本的にはありません。
- 考慮点: 引き取り手が見つかるか、自治体によって制度が異なる、寄付には条件がある場合が多いなど。
5. 解体する
建物を解体して更地にする方法です。建物を維持管理する手間はなくなります。
- かかるお金: 解体費用(建物の構造や規模によるが、木造で坪あたり数万円程度)。
- 得られるお金: 基本的にはありません。
- 考慮点: 建物を解体すると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、土地にかかる固定資産税が上がるのが一般的です。更地の方が売却しやすい場合と、建物があった方が良い場合があります。
どの選択肢を選ぶか、判断のポイント
空き家をどうするかは、その空き家の状況やご自身のライフプランによって異なります。以下の点を踏まえて検討すると良いでしょう。
- 空き家の状態と立地: 建物の築年数、傷み具合、地震への備え、そして最寄り駅からの距離や周辺環境などが、売却のしやすさや賃貸需要に大きく影響します。
- 今後の利用予定: 将来的にご自身やご家族が住む予定があるのか、活用する予定があるのかどうかは重要な判断材料です。
- ご自身の経済状況: 空き家にかかる維持費を負担し続けられるか、売却によって得られる資金の必要性などを考慮します。他の資産(預貯金や年金以外の収入など)とのバランスも大切です。
- ご家族との話し合い: 空き家の所有権がご自身だけでない場合や、将来的な相続に関わる場合は、ご家族とよく話し合い、皆が納得できる方法を見つけることが重要です。
すぐに結論が出ない場合でも、まずは空き家にかかる費用を正確に把握し、様々な選択肢があることを知っておくだけでも、漠然とした不安が軽減されるはずです。
どこに相談すれば良いのでしょう?
空き家に関する悩みは、一人で抱え込まず、専門家や行政の窓口に相談することをお勧めします。
- 不動産業者: 売却や賃貸に関する相談ができます。空き家の査定や市場動向についても教えてもらえます。複数の業者に相談してみるのも良いでしょう。
- 税理士: 固定資産税や譲渡所得税、相続税など、税金に関する専門的なアドバイスが得られます。
- 弁護士: 相続トラブルや隣地との境界問題など、法律に関する相談ができます。
- 自治体の空き家担当窓口: 空き家バンク制度の利用、空き家に関する補助金や相談窓口の案内、特定空家等への指定に関する相談などができます。まずは地域の自治体に問い合わせてみるのが一つの方法です。
- ファイナンシャルプランナー: 空き家の維持費や売却益を含めた、ご自身のライフプラン全体を踏まえた資金計画について相談できます。
まとめ:空き家のお金、早めに考えて備えましょう
空き家に関するお金の問題は、放置しておくと負担が増えたり、選択肢が狭まったりする可能性があります。年金生活を安心して送るためにも、空き家の維持費や税金について正しく理解し、ご自身の状況に合った「これから」を早めに考え始めることが大切です。
すぐに何かを決めなければならないわけではありません。まずは現状を知り、ご家族と話し合い、必要に応じて専門家にも相談しながら、無理のないペースで、ご自身にとって最良の方法を見つけていただければ幸いです。