年金生活に合わせた保険の見直し方 必要保障額と保険料のバランス
年金生活で保険を見直す大切さ
定年退職を迎え、年金を中心に生活されるようになると、収入や支出、そしてご家族の状況など、現役時代とは様々なことが変化します。それに伴い、「もしも」の時に備える保険についても、改めて見直す良い機会となることがあります。
現役時代に加入された保険が、現在の生活スタイルや必要性に合っているかを確認することで、将来への安心感を高めたり、保険料の負担を適正化したりすることが期待できます。漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身の状況に合わせて、一つずつ整理していくことが大切です。
なぜ年金生活で保険を見直すことを考えるのか
年金生活において保険の見直しが検討される主な理由としては、以下の点が挙げられます。
- 収入の変化: 収入が年金中心となり、現役時代に比べて収入額が少なくなる場合があります。保険料が現役時代の負担感と変わってくる可能性があります。
- ご家族の状況の変化: お子様が独立されるなど、扶養家族の状況が変わることで、万一の場合に必要となるお金(死亡保障など)の考え方が変わります。
- 公的な制度の活用: 高額療養費制度や公的介護保険など、高齢になった際に利用できる公的な医療・介護制度があります。これらの制度を理解することで、民間の保険でどこまで備えるべきかを判断する材料になります。
- 加入時の状況とのずれ: 加入された当時と現在では、健康状態や資産状況、ご自身の希望する備えの形が変わっていることがあります。
これらの変化を踏まえ、現在の保険契約がご自身の状況に合っているかを確認し、必要に応じて見直すことで、無駄なく必要な保障を準備することを目指します。
見直しのポイント1:ご自身に必要な保障額を考える
保険を見直す上でまず考えたいのは、「もしも」の時に、どれくらいの備えがあれば安心できるか、という点です。これを「必要保障額」と考えることができます。
必要保障額を考える際には、以下の要素を整理してみましょう。
- どのようなリスクに備えたいか: 入院や手術が必要になった場合の医療費、介護が必要になった場合の費用、あるいはご自身が亡くなった場合に残された家族に必要な生活費など、具体的にどのようなことに備えたいかを考えます。
- 公的な制度でどれくらいカバーされるか: 日本には健康保険や介護保険といった公的な社会保障制度があります。例えば、医療費には高額療養費制度があり、自己負担には上限が設けられています。これらの制度でカバーされる範囲を知ることは、民間の保険で準備すべき金額を考える上で非常に重要です。
- ご自身の貯蓄でどれくらい対応できるか: 今まで貯めてこられた貯蓄や退職金で、もしもの時の費用をどれくらいまかなえるかを考えます。貯蓄で対応できる部分は、必ずしも保険で備える必要がないかもしれません。
これらの点を踏まえ、「公的な制度でカバーされる金額」と「ご自身の貯蓄で対応できる金額」を差し引いて、それでも不足すると考えられる部分を、民間の保険で備えるべき必要保障額の目安とすることができます。
見直しのポイント2:保険の種類別に考える
ご自身の必要保障額の考え方が整理できたら、現在加入している保険がその必要性に合っているかを確認します。主な保険の種類ごとに見ていきましょう。
- 生命保険(死亡保険): ご自身が亡くなった場合に、残されたご家族の生活費や整理資金などに備える保険です。年金生活に入り、お子様が独立されている場合など、現役時代ほどの大きな死亡保障は必要なくなることも多いです。必要保障額を改めて計算し、保険金額が適切かを確認します。
- 医療保険: 病気やケガで入院や手術が必要になった場合の医療費に備える保険です。日本の公的医療保険は手厚いですが、差額ベッド代や先進医療の費用、入院中の食事代など、自己負担となる費用もあります。これらの費用に備えたいか、また、現在加入している医療保険の保障内容(入院給付金の日額、支払限度日数、手術給付金の有無など)がご自身の希望に合っているかを確認します。
- がん保険: がんと診断された場合や、がん治療のためにかかる費用に特化して備える保険です。がん治療は長期にわたる場合もあり、特定の治療法には高額な費用がかかることもあります。がん保険で備えたい範囲や、現在加入しているがん保険の保障内容(診断給付金、入院給付金、通院給付金、抗がん剤治療特約など)を確認します。
- 介護保険: 将来、介護が必要になった場合の費用に備える民間の保険です。公的な介護保険サービスを利用できますが、自己負担もありますし、公的なサービスでは足りない部分を民間のサービスで補いたいと考える方もいらっしゃいます。民間の介護保険で備えたい内容や、現在加入している保険の保障内容(介護状態の定義、給付金額、支払期間など)を確認します。
- 貯蓄型保険: 養老保険や終身保険の一部など、将来のために資金を貯めることも目的とした保険です。契約時に目標としていた目的(例えば、満期保険金で旅行に行くなど)が達成できたか、あるいは今後も貯蓄の手段として継続する必要があるかなどを検討します。解約した場合の解約返戻金についても確認できます。
見直しの進め方と注意点
保険を見直す際は、以下の点を踏まえて進めることをお勧めします。
- ご自身の保険契約を確認する: 現在加入している全ての保険証券を用意し、保障内容、保険期間、保険料、解約返戻金などを確認します。不明な点は、保険会社や加入時の担当者に問い合わせてみましょう。
- ご自身の状況と照らし合わせる: 現在の収入、貯蓄、ご家族の状況、健康状態、そして今後どのような生活を送りたいかといった将来の計画を整理し、必要保障額がどれくらいかを考えます。
- 必要に応じて専門家の意見も聞く: 保険の専門家(ファイナンシャルプランナーなど)や、加入されている保険会社の窓口、あるいは消費生活センターなどに相談することも一つの方法です。特定の保険商品への加入を急かされたり、不必要な保障を勧められたりしないよう、中立的な立場からのアドバイスを求めたい場合は、複数の相談先を検討すると良いでしょう。
- 焦らず慎重に判断する: 保険は長期にわたる契約です。すぐに結論を出さず、ご家族とも相談しながら、ご自身が納得できるまでじっくり検討することが大切です。
保険を見直すことで、保険料の負担が軽くなる可能性もあります。不必要な保障を削減したり、より保険料の低い商品に切り替えたり(ただし、健康状態によっては難しい場合もあります)といった方法が考えられます。ただし、保険を解約したり、保障額を減らしたりすると、将来、保障が必要になった時に困ることもあり得ます。安易な判断は避け、慎重に進めましょう。
まとめ
年金生活における保険の見直しは、ご自身の状況に合わせた適切な備えを整え、安心して日々を過ごすための大切なステップです。必要保障額を具体的に考え、現在加入している保険の内容を確認し、必要に応じて見直しを検討することで、保険料負担を適正化しつつ、将来への不安を和らげることができます。
ご自身のペースで、無理なく、納得のいく形で見直しを進めていただくことを願っています。