年金生活、貯金を眠らせておくのはもったいない? 少額から始める資産活用のヒント
年金生活におけるお金の悩みと資産活用
年金を受け取りながら生活されている皆様の中には、「この先の生活費は大丈夫だろうか」「貯金は取り崩すだけで、将来が不安だ」といった、お金に関する様々なお悩みや不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
物価が少しずつ上がり続けている今、銀行にお金を預けておくだけでは、お金の価値が実質的に目減りしてしまう可能性も考えられます。かつてのように高い金利が期待できない状況では、貯金を守りながらも、少しでもお金に「働いて」もらうことを考えてみるのも一つの選択肢となり得ます。
しかし、「資産活用」や「投資」と聞くと、「難しそう」「損をするのが怖い」「自分には関係ない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、お金が減るリスクはゼロではありません。だからこそ、ご自身の状況や考え方に合わせて、無理のない範囲で、慎重に進めることが大切です。
この記事では、年金生活の皆様が、貯金などの資産をただ置いておくだけでなく、少しだけ活用してみる場合の基本的な考え方と、無理なく始めるためのヒントをご紹介します。
なぜ年金生活でも資産活用を考えるのか
年金生活の主な収入は年金という方が多いかと存じます。これに退職金やそれまでの貯金を取り崩しながら生活されている方が一般的でしょう。
銀行に預けている貯金は安全ではありますが、現在の低金利では、利息はほとんどつきません。その一方で、物の値段(物価)が上がるインフレが起きると、今まで100円で買えていたものが110円になるように、お金の価値が下がってしまいます。つまり、同じ金額の貯金を持っていても、買えるものが減ってしまう可能性があるのです。
このような状況下で、ご自身の資産を少しでもインフレに強くしたり、緩やかにでも増やしたりする方法として、「資産活用」や「資産運用」が考えられます。これは、貯金をただ預けるのではなく、株式や投資信託といった形で世の中に資金を投じ、その成果を受け取ることで、お金自体に価値を生み出してもらう、という考え方です。
もちろん、必ずお金が増えるという保証はありませんし、減ってしまう可能性もあります。ですが、ご自身の状況やリスクに対する考え方に応じて、方法を選べば、大きなリスクを取らずに始めることも可能です。
年金生活者が無理なく資産活用を始めるためのヒント
では、実際に資産活用を考えるとして、どのように進めれば良いのでしょうか。特に年金生活に入られた皆様が無理なく始めるために、いくつか大切なヒントをご紹介します。
1. まずは「少額から」始める
資産活用というと、まとまったお金が必要だと思われがちですが、今は少額から始められる方法も増えています。例えば、毎月数千円や1万円といった、ご自身の家計に負担にならない範囲の金額から始めることができます。
最初から大きな金額を投じるのではなく、まずは少額で始めてみて、どのようなものなのかを肌で感じてみることが大切です。実際に経験することで、少しずつ理解が深まり、不安も和らぐことがあります。
2. 「安全性」を重視する
年金生活において最も大切なのは、毎日の生活を安心して送るための資金を確保することです。資産活用は、その資金を減らしてしまうような危険な方法を選ぶべきではありません。
例えば、元本(投資したお金)が保証されている「個人向け国債」のようなものや、専門家が多くの種類の資産に分けて投資してくれる「投資信託」の中でも、特にリスクが低いと言われるものを選ぶといった方法があります。
「高利回り」や「絶対に儲かる」といったうたい文句には十分注意し、ご自身が納得できる、安全性を重視した方法を選びましょう。
3. 「分からないもの」には手を出さない
資産活用には様々な種類があります。新聞やテレビで耳にするけれど、仕組みがよく分からないもの、人から勧められたけれど、内容が理解できないものには手を出さないことが賢明です。
まずは、ご自身が理解できる簡単なものから情報収集を始めましょう。銀行や証券会社の窓口、信頼できる専門家などに相談してみるのも良いでしょう。ただし、必ずしもその担当者の勧める商品を買う必要はありません。説明を聞き、ご自身で判断するための材料として活用してください。
4. 公的な制度なども調べてみる
国が用意している資産形成を支援する制度などもあります。例えば、「NISA(ニーサ)」という制度は、投資で得た利益にかかる税金が一定期間かからないという仕組みです。少額から始められる「つみたて投資枠」のようなものもあります。
こうした制度は内容が変わることもありますので、ご自身の状況に合わせて利用できるものがあるか、国の情報提供サイトなどで調べてみるのも良いでしょう。ただし、制度の利用は、投資そのもののリスクをなくすものではありません。
5. 家族とも話し合ってみる
お金のことは、一人で抱え込まず、信頼できるご家族や親しい方に相談してみることも大切です。特に、ご自身にもしものことがあった場合、これらの資産をどうするかといったことにも繋がりますので、元気なうちから話し合っておくと安心です。
焦らず、ご自身のペースで
資産活用は、必ずしも年金生活のすべての人に必要なものではありません。現在の貯金で十分な生活を送れている方や、リスクを一切取りたくないという方もいらっしゃいます。
大切なのは、「お金に働いてもらう」という考え方を知り、ご自身の状況に合わせて「考えてみる」ことです。すぐに行動に移さなくても、まずは情報収集を始めてみることからでも構いません。
この記事が、皆様のお金の活用について、考えるきっかけとなれば幸いです。ご自身の安心できるペースで、一歩ずつ進めていただければと思います。