年金生活の安心を支える いざという時のお金の備え方
年金生活における「いざという時」への備えの重要性
年金収入を中心に生活されている皆様にとって、日々の暮らしの中で「もしも」のことが起こった際のお金について、漠然とした不安を感じることもあるかもしれません。急な病気やケガ、自宅の設備の故障、予期せぬ冠婚葬祭など、普段の生活費とは別にまとまったお金が必要になる場面は、残念ながらゼロではありません。
年金生活では、現役時代のように収入を大きく増やすことが難しい場合がほとんどです。だからこそ、こうした「いざという時」のために、無理のない範囲で事前に備えをしておくことが、心の安心に繋がり、落ち着いて対応するために役立ちます。この記事では、年金生活における「いざという時のお金」について、どのように考え、どのように備えていくかをご一緒に考えていきたいと思います。
「いざという時」とは、具体的にどんな時でしょうか？
年金生活において「いざという時」として想定されるのは、例えば以下のようなケースです。
- 病気やケガ: 医療費や入院費、通院のための交通費など、一時的に大きな支出が必要になることがあります。高額療養費制度などで自己負担は軽減されますが、それでも準備しておくと安心です。
- 災害: 地震や台風などで自宅が被害を受けた場合、修繕費用や一時的な避難にかかる費用などが発生する可能性があります。
- 自宅の設備の故障: 給湯器やエアコン、水回りなど、生活に不可欠な設備が故障した場合、修理や交換に費用がかかります。
- 親戚や友人の冠婚葬祭: お祝い事やお悔やみ事など、予期せず急な出費が必要になることがあります。
- その他: 介護が必要になった際の準備費用の一部、遠方の家族の元へ駆けつける交通費など、想定外の支出は様々です。
こうした一つ一つの出来事が、普段の生活費だけで賄いきれない場合に備えが必要となります。
いざという時のお金は、どのくらい準備しておけば安心でしょうか？
「いざという時のお金」として、具体的にいくら準備しておけば十分か、という明確な答えはありません。なぜなら、それは個々の生活スタイル、健康状態、持ち家の有無、家族構成などによって大きく異なるためです。
しかし、一つの目安として、月々の生活費の3ヶ月分から6ヶ月分程度を準備しておくと良いと言われることがあります。例えば、月々の生活費が20万円であれば、60万円から120万円程度となります。
この金額は、あくまで一般的な目安です。ご自身の過去の経験や、今後起こりうる可能性（例: 現在の健康状態、自宅の築年数など）を考慮して、無理のない範囲で目標金額を考えてみてください。
重要なのは、一度に大きな金額を貯めようと気負いすぎず、「このくらいあれば少し安心できるかな」と思える現実的な目標を設定することです。
無理なく始める「いざという時のお金」の備え方
では、どのようにしてこの「いざという時のお金」を準備していけば良いのでしょうか。
1. まずは家計の状況を確認する
最初の一歩は、ご自身の家計が現在どのような状況にあるかを知ることです。月々の収入と支出を書き出してみましょう。これにより、どこにどれだけお金を使っているかが見えてきます。「キミのおこづかい会議」サイト内にある家計の見直しに関する記事も参考にしながら、無理のない範囲で削減できる支出がないか検討してみるのも良いでしょう。
2. 目標金額を設定し、少しずつ貯める
「月々の生活費の〇ヶ月分」という目安を参考に、ご自身の目標金額を設定します。そして、その目標に向かって、毎月少しずつでも良いので貯める習慣をつけましょう。例えば、月に1万円でも、1年続ければ12万円になります。無理のない金額から始めて、継続することが大切です。
3. 貯める場所を工夫する
いざという時のお金は、必要な時にすぐに引き出せる場所に置いておくことが重要です。
- 普通預金: 最も一般的で、出し入れが自由なため、いざという時にすぐに使えます。ただし、預金金利は低い傾向にあります。
- 定期預金: 普通預金より金利は高めですが、原則として満期まで引き出せません。ただし、緊急時には解約して引き出すことも可能です（この場合、適用金利が低くなることがあります）。すぐに必要になる可能性が低い一部のお金を置いておくのに適しているかもしれません。
- ネット銀行: 店舗がないため、窓口での手続きはできませんが、一般的に普通預金や定期預金の金利が比較的高い傾向があります。インターネットの操作に慣れている方であれば選択肢の一つとなりますが、安全には十分配慮が必要です。
ここで重要なのは、「すぐに引き出せること」と「元本が保証されていること（安全性が高いこと）」です。株式や投資信託など、価格が変動する可能性のあるものに「いざという時のお金」を置いておくのは、必要な時に資産が減っているリスクがあるため、避けた方が賢明です。
「いざという時のお金」と、将来のために時間をかけて増やすことを目的としたお金は、分けて管理するのが良いでしょう。
備えたお金の管理と見直し
「いざという時のお金」を準備できたとしても、それで終わりではありません。年に一度など、定期的に貯めた金額が目標に達しているか、あるいは目標金額は適切かなど、見直す時間を持つことが大切です。生活状況や健康状態の変化に応じて、必要な金額も変わってくる可能性があります。
また、このお金は文字通り「いざという時」のために取っておくお金です。普段の生活費が足りなくなったからといって安易に取り崩すのではなく、まずは家計を見直したり、他の方法で対応できないかを考えたりすることが望ましいです。
まとめ：安心のための小さな一歩から
年金生活における「いざという時のお金の備え」は、難しく考える必要はありません。まずは、ご自身の家計状況を知り、無理のない範囲で「このくらいあったら安心かな」という目標金額を考えてみること。そして、毎月少しずつでも良いので、すぐに引き出せる安全な場所に貯めていくこと。その小さな一歩が、将来の大きな安心に繋がります。
お金に関することは、一人で悩まず、ご家族や信頼できる人に相談したり、地域の相談窓口を利用したりすることも考えてみてください。「キミのおこづかい会議」も、皆様がお金について考え、話し合うきっかけを提供できる場でありたいと願っています。