災害に慌てないために 年金生活のお金、今からできる備え
はじめに:もしもの時、お金の不安を少しでも減らすために
災害は、いつ、どこで起こるか予測が難しいものです。特に年金生活に入られてから、ご自身やご家族の安全だけでなく、「もしもの時、お金はどうなるのだろうか」と漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
年金がいつも通りに入金されるのか、ATMが使えなくなるのではないか、現金が手元に必要なのかなど、考えるときりがありません。しかし、事前に少しでも備えておくことで、いざという時に慌てず、落ち着いて行動するための助けとなります。
この記事では、年金生活を送る皆さまが、災害時にお金に関する不安を少しでも和らげるために、今からできる具体的な備えについてご紹介します。難しいことはありませんので、無理のない範囲で、一緒に考えてみましょう。
災害時、お金はどうなる可能性があるのか
大きな災害が発生すると、私たちの生活は一時的に混乱します。お金に関しても、普段当たり前に使っているサービスが利用できなくなる可能性があります。
- 現金が不足する可能性: 災害によって銀行の支店やATMが閉鎖されたり、停電や通信障害でATMが使えなくなったりすることが考えられます。また、お店がクレジットカードや電子マネーに対応できず、現金しか使えない状況になることもあります。
- 年金の受給遅延や変更: 災害の規模によっては、年金の支払いや手続きに一時的な遅れが生じる可能性もゼロではありません。
- 銀行窓口の混雑: 災害発生後は、お金を引き出そうとする人々で銀行の窓口が大変混雑することが予想されます。
- 通帳や印鑑、カードの紛失・破損: 災害によって自宅が被害を受け、大切な金融関連の書類やカードを紛失・破損する危険性があります。
このような状況を想定し、事前に準備を進めることが安心につながります。
今からできる、災害時のお金に関する具体的な備え
それでは、具体的にどのような準備をしておけば良いのでしょうか。すぐにでも始められることからご紹介します。
1. 手元に置く現金の適正量を考える
災害時には、電気や通信が止まり、キャッシュレス決済やATMが使えなくなる可能性があります。このような状況に備え、ある程度の現金を自宅に準備しておくことが推奨されています。
どのくらい用意するかは、ご自身の生活状況によって異なりますが、一般的には、ご家族が数日〜1週間程度を過ごせるだけの生活費(食料品、水、日用品の購入など)を目安にすると良いでしょう。小銭も少し用意しておくと、自動販売機や公衆電話(今は少ないかもしれませんが)などで役立つことがあります。
ただし、あまり多額の現金を自宅に置くのは、盗難などのリスクも伴います。ご自身の安心できる範囲で、必要最低限の金額を検討することが大切です。また、現金の保管場所は分散させることも考慮に入れましょう。
2. 大切な書類や貴重品の管理を見直す
預金通帳、銀行の印鑑、健康保険証、運転免許証、年金手帳、不動産の権利証、保険証券など、お金やご自身の証明に関わる大切な書類や貴重品は、災害時にすぐに持ち出せるよう、一箇所にまとめておくのが良いでしょう。
可能であれば、これらの重要書類のコピーをとっておき、原本とは別の場所に保管したり、信頼できる親族に預けたりすることも、万が一の備えとして有効です。デジタルで保存する場合は、パスワード管理をしっかり行う必要があります。
3. 加入している保険を確認する
火災保険や地震保険に加入しているか、加入内容が現在の状況に合っているかを確認しておきましょう。これらの保険は、被災後の生活再建において経済的な支えとなります。保険証券が見つからない場合は、保険会社に問い合わせてみましょう。
4. 金融機関の災害時対応を知っておく
多くの金融機関では、災害発生時に臨時の相談窓口を設置したり、預金通帳や印鑑がなくても本人確認ができれば預金の引き出しに応じたり、ローンの返済猶予に応じたりするなどの特別措置を講じることがあります。
普段利用している金融機関のホームページなどで、災害時の対応方針について確認しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
5. 公的な支援制度について知っておく
国や自治体は、被災者向けの様々な支援制度を用意しています。「被災者生活再建支援制度」のように、住宅の被害状況に応じて支援金が支給される制度などがあります。
こうした制度は、災害が発生してから情報収集することもできますが、あらかじめどのような支援があるのか、どこに問い合わせれば良いのかの概略を知っておくと、被災後にスムーズに手続きを進める助けになります。自治体の防災情報などを確認してみましょう。
6. 家族と情報共有をする
災害時のお金の備えについて、ご家族と話し合っておくことも非常に重要です。どこにいくらくらいの現金を置いているか、大切な書類はどこに保管しているか、などを共有しておけば、もしもの時にお互いを助け合うことができます。また、離れて暮らす家族がいる場合は、安否確認の方法とあわせて、お金に関する連絡方法についても話し合っておくと安心です。
無理なく、できることから始める
災害への備えは、一度に全てを完璧に行う必要はありません。まずは手元に置く現金の額を少し見直すことから、あるいは大切な書類をまとめることからなど、できることから少しずつ始めてみましょう。
定期的に見直す時間を作ることも大切です。ご自身の状況や、世の中の情報に合わせて、備えを更新していくことが、長く続く安心につながります。
まとめ:安心のための第一歩
年金生活における災害時のお金の備えは、難しいことや特別なことばかりではありません。手元に置く現金の確認、大切な書類の整理、保険の確認など、身近なことから始めることができます。
これらの準備は、いざという時にご自身やご家族を守るための、そしてその後の生活を立て直すための大切な一歩となります。この機会に、ぜひご自身の状況に合わせて、できることから備えを進めてみてください。安心した年金生活を送るための一助となれば幸いです。