年金生活の『お金の不安』を安心に変える 小さな目標設定の始め方
年金生活の『お金の不安』を安心に変える 小さな目標設定の始め方
年金生活に入り、収入が年金だけになったり、将来の物価上昇などが気になったりして、お金に対する漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。健康や介護、趣味など、これからかかるかもしれない費用を考えると、一体いくらあれば安心なのか、どう管理すれば良いのか、考えがまとまらず、かえって不安が大きくなることもあるでしょう。
しかし、その「漠然とした不安」は、少し立ち止まって整理することで、安心に変えていくことができます。大切なのは、一度にすべてを解決しようとしないこと。まずは、無理のない「小さな一歩」を踏み出すことから始めてみませんか。この記事では、年金生活のお金の不安を和らげるための、「小さな目標設定」の始め方についてお話しします。
なぜ「漠然とした不安」が生まれるのか？
お金に関する不安は、主に「先の見通しがはっきりしないこと」から生まれることが多いようです。具体的な金額や時期が分からず、「もしも」のことばかり考えてしまうと、不安はどんどん膨らんでしまいます。
不安を和らげるためには、まず現状を把握し、将来の「見通し」を少しでも立ててみることが有効です。そして、そのために役立つのが、「家計の見える化」と、それを踏まえた「小さな目標設定」なのです。
ステップ1：現状を知る - 家計を「見える化」する
まずは、ご自身のお金の流れがどうなっているのか、「見える化」することから始めましょう。難しく考える必要はありません。
- 方法を選ぶ: 家計簿アプリ、ノート、エクセルのような表計算ソフト、簡単な一覧表など、ご自身が一番取り組みやすい方法を選んでみてください。完璧を目指す必要はありません。まずは1ヶ月、おおまかな収入と支出を把握することから始めましょう。
- 記録する: 年金の入金額、毎月必ずかかる固定費（家賃やローン、光熱費、通信費、保険料など）、そして食費や日用品費、趣味娯楽費といった変動費を記録してみます。
- ポイント: 細かい分類にこだわりすぎず、「何に」「いくら」使っているのかを把握することが大切です。「つい使いすぎてしまうな」と感じる項目があれば、それがどこなのかを見つけやすくなります。
家計を「見える化」することで、漠然としていたお金の流れが具体的に見えてきます。「思ったより使っていないな」と感じるかもしれませんし、「この項目はもう少し抑えられるかも」といった気づきがあるかもしれません。
ステップ2：不安の正体を探る - 何が一番気になりますか？
家計の現状が少し見えてきたら、次に「何が一番不安なのか」を具体的に考えてみましょう。
- 書き出してみる: 紙に書き出してみるのも良い方法です。「物価高で生活費が足りなくなるかも」「大きな病気をしたら医療費が心配」「介護が必要になったらどうしよう」「孫にお祝いをあげたいけど、貯金を取り崩したくない」「趣味にお金がかかりすぎる」など、心の中で漠然と感じていることを言葉にしてみましょう。
- 整理する: 書き出した不安を、「金額がはっきりしているもの」「金額が予測しにくいもの」「自分ではコントロールしにくいもの」「工夫次第で変えられるもの」のように整理してみると、考えやすくなります。
不安の正体が具体的に見えてくると、「漠然としたもの」から「対処できるかもしれないもの」へと変わってきます。
ステップ3：小さな目標を設定する
不安の正体が分かったら、それを解消するため、あるいは「こうなったらいいな」という希望を叶えるための「小さな目標」を設定してみましょう。
- 無理のない範囲で: 大切なのは、今の自分にとって「無理なくできる」目標にすることです。例えば、「毎月1万円貯める」のが難しければ、「まずは来月5,000円の節約を目指す」でも良いのです。
- 具体的に: 「節約する」だけではなく、「月に2回外食を減らす」「利用していないサブスクリプションを見直す」「買い物に行く回数を減らす」など、具体的な行動につながる目標にすると、取り組みやすくなります。
- 目標の例:
- 月に〇〇円、生活費を抑える
- 1年間で△△円を、緊急時のための備えとして貯める
- 趣味の費用を、月に□□円以内にする
- 次の健康診断の費用を、□ヶ月後の年金から確保しておく
大きな目標も、小さな目標に分解すれば、手が届くように感じられます。「少し頑張ればできそう」と思えるレベルの目標設定が、継続の鍵となります。
ステップ4：まずは一歩踏み出す
目標を設定したら、考えすぎずにまずは一歩踏み出してみましょう。
- できることから始める: 設定した小さな目標に向け、今日からできること、今週中にできることなど、すぐに行動に移せることを見つけます。
- 完璧主義にならない: 完璧に目標を達成できなくても大丈夫です。例えば「月に5,000円節約」が目標でも、3,000円しか節約できなかったとしても、それは立派な一歩です。できた部分を認め、次の月にまた挑戦すれば良いのです。
- 記録をつける: 目標に向けた行動の結果を、家計簿や簡単なメモで記録すると、達成状況が分かりますし、モチベーションの維持にもつながります。
「行動すること」自体が、不安を打ち破る力になります。「何もしないで漠然と不安がっている」状態から、「目標に向かって行動している」状態になるだけで、心が軽くなるはずです。
ステップ5：定期的に見直す
設定した目標や、家計の状況は、一度やったら終わりではありません。定期的に見直すことが大切です。
- いつ見直すか: 月に一度、あるいは数ヶ月に一度など、ご自身にとって無理のない頻度で見直しの機会を設けましょう。
- 何を見直すか: 目標の達成状況、家計の状況、そして最初に書き出した「不安の正体」を見直します。目標が高すぎたり、低すぎたりしないか、状況に合わせて調整が必要かなどを考えます。
- 状況の変化に対応: 物価がさらに上がったり、体調が変わったりと、年金生活を取り巻く環境は変化します。それに合わせて、目標や家計管理の方法も柔軟に見直していくことが、長く安心してお金を管理していく秘訣です。
まとめ：小さな目標が安心につながる
年金生活におけるお金の不安は、多くの方が感じることです。しかし、その不安にただ立ち止まるのではなく、「家計の見える化」で現状を把握し、不安の正体を明らかにし、そして「無理のない小さな目標」を設定して一歩踏み出すことで、着実に安心へと変えていくことができます。
完璧を目指す必要はありません。できることから、少しずつ。今日お話しした「小さな目標設定」が、あなたの年金生活の安心につながる、はじめの一歩となれば幸いです。まずは、ノートとペンを用意して、今日の支出を書き出すことから始めてみませんか。