年金生活を安心・豊かに お金の「使い分け」を考えるヒント
年金生活、お金の「使い分け」を考える大切さ
定年退職を迎え、年金生活に入られますと、収入の形や金額が現役時代とは変わることがほとんどです。これまで給与として受け取っていたお金と、年金として受け取るお金では、感覚が異なる方もいらっしゃるかもしれません。また、退職金やこれまでに貯めてこられたお金を、今後どのように使っていくべきか、漠然とした不安や疑問を感じる方もいらっしゃるかと存じます。
このような時期だからこそ、ご自身のお金をどのように「使い分け」ていくかを考えることは、年金生活をより安心し、ご自身らしく豊かに過ごすための大切な一歩となります。この記事では、年金生活におけるお金の「使い分け」について、その考え方のヒントをご紹介いたします。
なぜ「使い分け」を考えることが大切なのでしょうか?
年金収入は、基本的に毎月定額で入ってくることが見込まれますが、劇的に増えることはあまり期待できません。一方、生活にかかる費用は、日々の食費や光熱費から、いざという時の医療費、住まいの修繕費、時には趣味や旅行といった心豊かな暮らしのための費用まで、様々な種類があります。
これらの費用を、限られた収入とこれまでの貯蓄で賄っていくためには、計画性が重要になります。お金を漠然と使うのではなく、「これは年金で」「これは貯蓄から」「これは将来のために取っておこう」というように、目的や性質に合わせて「使い分け」の意識を持つことで、以下のようなメリットが考えられます。
- 安心感が増す: 今だけでなく、将来必要になるであろうお金に備える道筋が見え、漠然とした不安が和らぎます。
- お金の流れが明確になる: 毎月の収入と支出、そして手元にあるお金全体を把握しやすくなります。
- 価値観に基づいたお金の使い方ができる: ご自身にとって本当に大切なこと、譲れないことに優先的にお金を使う判断がしやすくなります。
- 無駄遣いが減る: 「何のためのお金か」を意識することで、衝動的な支出を抑える助けになります。
「使い分け」を考える第一歩:現状を知ること
お金の「使い分け」を始める前に、まずはご自身のお金に関する現状を正確に把握することが大切です。
- 収入の確認:
- 毎月受け取る年金の額を確認しましょう。
- 他に家賃収入やアルバイト収入など、定期的な収入があればそれもリストアップします。
- 支出の把握:
- 毎月必ずかかる費用(家賃、光熱費、通信費、保険料など)である「固定費」を確認します。
- 食費、日用品費、医療費、交際費など、月によって変動する費用である「変動費」も、大まかで構いませんので把握を試みましょう。過去の記録(家計簿や通帳)を参考にされると良いでしょう。
- 貯蓄・資産の確認:
- 銀行預金、ゆうちょ銀行の貯金、退職金、投資信託など、現在お持ちの貯蓄や資産の全体像を確認します。
ご自身の収入と支出のバランス、そして手元にあるお金の総額が分かると、「これから毎月いくらくらい使えるのか」「いざという時に備えてどれくらい確保しておけるのか」といったことが見えてきます。
具体的な「使い分け」の考え方
現状を把握したら、次にご自身にとってどのような「使い分け」が合っているかを考えてみましょう。決まった正解があるわけではありませんが、一般的な考え方として、以下のような項目に分けて考えることができます。
- 毎月の生活費:
- 食費、光熱費、水道費、通信費、日用品、医療費(定期的な通院など)といった、暮らしを維持するための基本的な費用です。
- 主な財源の考え方: これらは主に毎月入ってくる年金収入で賄うことを目指すと、安定した家計管理がしやすくなります。
- ゆとり費(自己投資・楽しみ・交際費など):
- 趣味にかかる費用、旅行費、外食費、友人や知人との交流費、習い事、孫へのおこづかいなど、生活に彩りや楽しみをもたらす費用です。
- 主な財源の考え方: 年金収入で賄いきれない部分や、少し高額な支出になる場合は、これまでの貯蓄や退職金から計画的に使うことを検討します。例えば、「年に一度の旅行のために貯蓄を取り崩す」「毎月の趣味の費用は〇万円までと決め、年金プラス貯蓄から充てる」といった考え方です。
- 将来への備え(医療・介護・住まいなど):
- 大きな病気や怪我をした際の医療費、将来介護が必要になった場合の費用、自宅の大規模なリフォームや修繕費など、いますぐ必要ではないけれど、将来的に発生する可能性のある高額な費用です。
- 主な財源の考え方: これらは貯蓄の中から、すぐに使う予定のない資金として確保しておくことが重要です。「使ってしまうかもしれない」という場所ではなく、引き出しにくい別の口座に移したり、種類を分けたりするのも一つの方法です。
- 予備費(緊急時対応):
- 家電の故障、急な冠婚葬祭、予期せぬトラブルなど、突然発生する支出に備えるための資金です。
- 主な財源の考え方: こちらも貯蓄の中から、いつでも引き出せるように一定額を用意しておくと安心です。
これらの項目以外にも、ご自身の状況に合わせて「孫への援助費」「親族への仕送り」「社会貢献活動への寄付」といった項目を設定しても良いでしょう。
「使い分け」を続けるためのポイント
お金の「使い分け」を考えることは、一度きりではなく、定期的に見直しながら続けていくことが大切です。
- 完璧を目指さない: 最初から理想通りにいかなくても構いません。まずは大まかな目安を立てることから始めてみましょう。
- 記録をつける: 簡単な家計簿をつける、支出を項目ごとにメモするなど、お金の流れを「見える化」すると、計画通りに進んでいるか、見直す必要があるかが分かりやすくなります。
- 定期的に見直す: 半年に一度、あるいは年に一度など、ご自身の状況(健康状態、家族構成の変化、物価の変動など)に合わせて、立てた計画や「使い分け」の割合を見直しましょう。
- 柔軟に対応する: 計画通りにいかない月があっても落ち込まず、翌月以降で調整するなど、柔軟な気持ちで取り組みましょう。
- 家族と話し合う: パートナーやご家族がいらっしゃる場合は、お金に関する考えや「使い分け」についてオープンに話し合う時間を設けることをお勧めします。認識を共有することで、お互いの安心につながります。
まとめ
年金生活におけるお金の「使い分け」は、現在の暮らしを維持するだけでなく、将来への安心を確保し、そして何よりも、ご自身が人生の後半をどのように過ごしたいかという価値観を反映させるための大切な考え方です。
収入と支出の現状を把握し、これから先の人生で何に重きを置きたいかを考えながら、無理のない範囲で「使い分け」の計画を立ててみましょう。完璧な計画でなくても大丈夫です。ご自身のお金とじっくり向き合う時間を持ち、安心で豊かな年金生活を送るための一歩を踏み出していただければ幸いです。