年金と税金のお話 老後の暮らしで押さえておきたいポイント
年金生活と税金について考える
年金生活に入り、主な収入が年金となったとき、税金についてどのように考えれば良いか、戸惑いや漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。現役世代の頃とは収入の形が変わり、税金との向き合い方も変わってきます。
今回は、年金にかかる税金の基本的な考え方と、年金生活を送る上で知っておいていただきたいポイントについて、分かりやすくお話しいたします。税金について正しく理解することで、不要な心配を減らし、安心して暮らしを送るための一助となれば幸いです。
年金にも税金はかかるのでしょうか?
私たちが受け取る公的年金(国民年金や厚生年金)は、原則として所得と見なされ、税金(所得税や住民税)の対象となります。これは、現役時代に受け取る給与と同じように、収入として扱われるためです。
ただし、年金には税金の負担を軽減するための仕組みがあります。「公的年金等控除」というものが適用され、年金の額に応じて一定額が非課税となります。この控除のおかげで、年金収入のすべてに税金がかかるわけではありません。
また、個人年金保険などで受け取る年金についても、契約の種類や受取方法によっては税金がかかる場合があります。こちらは公的年金とは計算方法などが異なることが一般的です。
知っておきたい税金のポイント
年金生活で特に押さえておきたい税金に関するポイントをいくつかご紹介します。
1. 源泉徴収について
公的年金からは、原則として所得税が源泉徴収(あらかじめ差し引かれること)されます。日本年金機構などから送られてくる年金振込通知書には、差し引かれた税金の額が記載されていますので、ご確認いただけます。
2. 確定申告が必要な場合
多くの場合、公的年金しか収入がない方は、確定申告が不要です。これは、年金からの源泉徴収で納税が完了する場合が多いからです。
しかし、以下のようなケースでは、確定申告が必要になったり、確定申告をすることで税金が還付されたりする可能性があります。
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円を超える かつ、それ以外の所得が20万円を超える場合(所得税の確定申告が必要です)
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下 であっても、公的年金以外の所得がある場合(その所得の内容によっては確定申告が必要です)
- 医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除などを受けたい場合
- 年金の源泉徴収額が多すぎたと思われる場合
ご自身の状況が確定申告が必要かどうかわからない場合は、後述する相談先に確認することをおすすめします。
3. 税金負担を軽減する可能性のある「控除」
年金収入にかかる税金についても、様々な控除が適用されることで税金負担が軽減される可能性があります。公的年金等控除の他に、以下のような控除が考えられます。
- 医療費控除: 1年間に支払った医療費が一定額を超える場合に適用できます。ご家族(生計を一にする親族)の医療費も合算できます。
- 生命保険料控除・地震保険料控除: 支払っている保険料に応じて適用できます。
- 扶養控除・配偶者控除: 扶養しているご家族がいる場合に適用できます。
- 障害者控除: ご自身や扶養しているご家族が障害者である場合に適用できます。
これらの控除を適用するためには、多くの場合、確定申告が必要です。該当する可能性がある場合は、必要な書類を準備し、申告を検討することをお勧めします。
4. 住民税について
住民税は、前年の所得に対して課税されます。公的年金も住民税の対象所得となりますが、年金からの天引き(特別徴収)で納める方法が一般的です。確定申告をした場合は、その内容に基づいて住民税額が計算されます。
税金に関する不安、誰に相談すれば良い?
税金について分からないことや不安なことがある場合は、一人で抱え込まず、専門家や公的な相談窓口に相談することが大切です。
- 税務署: 所得税に関する相談に応じてくれます。確定申告の時期には相談窓口が設けられます。
- お住まいの市区町村の役場: 住民税に関する相談に応じてくれます。
- 税理士: 税金に関する専門家です。確定申告の手続きなどを依頼することも可能です(費用がかかる場合があります)。
- 年金事務所: 年金に関する手続きの窓口ですが、年金からの源泉徴収に関する一般的な情報などを確認できる場合もあります。
ご自身の状況に合わせて、適切な相談先を選びましょう。
まとめ
年金生活における税金は、現役時代とは仕組みが異なりますが、基本的なルールを理解し、適切に対応することが大切です。年金にも税金はかかりますが、公的年金等控除など負担を軽減する仕組みがあり、さらに医療費控除などの適用も考えられます。
ご自身の年金収入やその他の収入、適用できる可能性のある控除について確認し、確定申告が必要かどうか、あるいは確定申告をした方が有利になるかどうかを検討してみましょう。もし不安や疑問があれば、税務署やお住まいの役場、税理士などの専門家に遠慮なく相談してください。
税金について正しく知り、適切に対応することが、安心して年金生活を送るための一歩となります。