キミのおこづかい会議

安心な老後へ 介護費用や医療費の賢い貯め方・考え方

Tags: お金, 老後, 医療費, 介護費, 貯蓄, 備え

はじめに:老後のお金に関する不安と向き合う

定年退職後の生活において、年金収入だけでのやりくりや、退職金・貯金の管理について、漠然とした不安を感じていらっしゃる方も少なくないかと存じます。特に、いつか必要になるかもしれない医療費や介護費用については、「一体いくらくらいかかるのだろうか」「どう備えれば良いのだろうか」といった具体的な疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、そうした老後の大きな出費となりうる医療費や介護費用について、どのように考え、どのように無理なく備えていくかについて、分かりやすく解説いたします。専門的な知識は不要です。ご自身の状況に合わせて、これからのお金の計画を立てるための一助となれば幸いです。

なぜ医療費や介護費用の備えが必要なのか

人生の後半期には、若い頃に比べて医療や介護の必要性が高まる傾向にあります。健康寿命が延びている一方で、平均寿命との間には差があり、医療や介護が必要な期間が長くなる可能性も考えられます。

もちろん、日本の公的な医療保険制度や介護保険制度は非常に手厚く、費用の大部分を公的な給付で賄うことができます。しかし、それでも自己負担となる部分や、保険適用外の費用(差額ベッド代、先進医療、介護保険のサービス枠を超えた利用費など)が発生する場合があります。また、長期にわたるサービス利用や施設への入居を考えた場合、まとまった費用が必要になることもあります。

公的な制度があるから安心、と考えるだけではなく、ご自身やご家族にとって必要な備えについて、一度じっくりと考えてみることが大切です。

公的な制度を理解する:医療保険と介護保険

まずは、私たちの生活を支える大切な柱である、公的な医療保険と介護保険について基本的なところを確認しましょう。

医療保険

病気やケガで医療機関にかかった際の医療費の自己負担割合は、年齢や所得によって異なりますが、一般的には窓口で支払うのは1割~3割です。さらに、ひと月の医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。この制度を利用することで、急な病気や長期入院などで医療費が高額になっても、自己負担には上限が設けられています。ご自身の所得区分によって上限額は異なりますので、一度確認しておくと良いでしょう。

介護保険

介護が必要と認定された場合、介護サービスにかかる費用の自己負担割合は原則1割、所得に応じて2割または3割となります。利用できるサービスの量には、要介護度に応じた上限(支給限度額)が設定されています。上限額の範囲内でサービスを利用する場合、自己負担は割合に応じた金額となりますが、上限を超えてサービスを利用した場合は、超えた分の費用は全額自己負担となります。また、特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用する場合、サービス費用の自己負担分に加えて、食費や居住費などが別途かかります。

これらの制度を理解しておくことは、将来かかるかもしれない費用を予測し、備えを考える上で非常に重要です。

自己負担分への備え方:貯蓄と保険の見直し

公的な制度があるとはいえ、自己負担分や保険適用外の費用に備えるためには、ある程度の準備が必要です。では、具体的にどのように備えを進めれば良いのでしょうか。

貯蓄の考え方

まずは、手元の貯蓄を医療費や介護費用に充てるという考え方です。すぐに引き出せる普通預金や、元本保証のある定期預金など、安全性の高い形で資金を確保しておくことが安心につながります。いくら備えるべきかについては、一概には言えませんが、例えば「介護が必要になった場合の初期費用として〇〇万円」「毎月の介護サービス費用として〇〇円を〇年間」など、ご自身の状況や希望する介護の形(在宅か施設かなど)を考慮して、具体的な目標額を考えてみると良いでしょう。

生命保険や医療保険・介護保険の見直し

若い頃に加入した生命保険や医療保険、最近では介護保険の個人向け商品もあります。これらの保険が、現在のライフスタイルや将来の医療・介護への備えとして適切かどうか、一度内容を確認してみることも有効です。保障内容が重複していないか、必要な保障は十分に得られるかなどを見直し、必要に応じて保険会社や専門家に相談してみるのも一つの方法です。ただし、新しい保険に加入する際は、保険料の負担と保障内容のバランスを慎重に検討し、無理のない範囲で行うことが重要です。

資産の活用

退職金やこれまでの貯蓄を、安全性を考慮した形で少しずつ活用していくことも考えられます。ただし、値動きのある金融商品で積極的に増やす、といった考え方は、高齢期の資産管理においてはリスクが伴う場合もあります。まずは、生活資金や将来の医療・介護費用として必要になるであろう資金をしっかりと確保した上で、余裕のある資金について、ご自身の理解できる範囲で、無理のない方法を検討することが肝要です。

お金の準備を始めるステップ

将来の医療費や介護費用について考えることは、少し気が重いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、漠然とした不安を具体的な行動につなげることで、安心感を得ることができます。

  1. 現状を知る: まずは、現在の貯蓄額や年金収入、そして現在の支出を把握することから始めましょう。家計簿をつけてみたり、通帳を確認したりして、ご自身のお金の流れを「見える化」します。
  2. 将来の可能性を考える: ご自身の健康状態やご家族の状況、そして将来どのような生活を送りたいか(自宅で過ごしたいか、施設への入居も視野に入れるかなど)を考え、将来かかりうる費用について、あくまで概算としてでも良いので想像してみましょう。公的な介護サービスの費用などは、インターネットなどで情報収集することも可能です。
  3. 目標額を設定する: 現状と将来の可能性を踏まえ、医療費や介護費用として、おおよそどれくらいの金額を目標として備えておくべきかを考えてみます。
  4. 無理のない計画を立てる: 目標額に向けて、毎月少しずつ貯蓄を増やすのか、または退職金の一部を取り分けておくのかなど、ご自身の状況に合わせて無理のない範囲で計画を立て、実行に移します。
  5. 夫婦や家族と話し合う: 一人で抱え込まず、配偶者やお子さんなど、信頼できるご家族と率直にお金の話をすることも非常に大切です。お互いの考えや希望を共有することで、より現実的で安心できる計画を立てることができます。

まとめ:焦らず、着実に備えを進める

老後の医療費や介護費用への備えは、一度に全てを解決しようとするのではなく、少しずつ、そして着実に進めていくことが大切です。この記事でご紹介した情報が、皆様がご自身のお金について考え、行動を始めるための一つのきっかけとなれば幸いです。不安を感じた時は、専門機関や信頼できるご家族に相談しながら、安心できる老後へと向かう一歩を踏み出してください。