年金生活、一人になった時のために 今から知っておくべきお金の手続きと生活設計
はじめに
年金生活を送られている皆様にとって、大切な配偶者との日々は何物にも代えがたい宝物であることと存じます。しかし、人生には予期せぬ出来事が起こることもあります。もし、配偶者の方が先に旅立たれた場合、残された方が直面する手続きや、その後の生活について、特に「お金」に関することは、多くの方が不安を感じられる点ではないでしょうか。
この記事では、年金生活を安心して続けていくために、もしもの時に慌てないよう、今から少しずつ知っておくべきお金に関する手続きや、これからの生活設計について、分かりやすくご説明いたします。すぐに全てを準備する必要はありませんが、知識として持っておくことで、いざという時の不安を和らげることができます。
もしもの時に、まず落ち着いて行うこと
配偶者が亡くなられた直後は、悲しみの中で多くの手続きに追われることになります。この時期に、お金に関する重要な手続きを漏らさず行うためには、いくつか心に留めておきたいことがあります。
まず最も大切なのは、可能であれば事前に「誰に相談すれば良いか」を決めておくことです。信頼できるご家族、友人、あるいは専門家など、緊急時に連絡を取り、アドバイスを求められる相手がいると、一人で抱え込まずに済みます。
また、亡くなられた後の手続きには、市区町村への死亡届の提出など、お金に関わる以前に行うべき基本的なものがあります。これらの手続きについても、何を、いつまでに、どこで行う必要があるかを、できる範囲で確認しておくと良いでしょう。役所の窓口やホームページで情報収集ができます。
お金に関する具体的な手続き(亡くなった直後~しばらくの間)
配偶者が亡くなられた後、お金に関する手続きは多岐にわたります。ここでは主なものをご紹介します。
銀行口座や公共料金の名義変更・整理
配偶者名義の銀行口座は、亡くなられた事実が金融機関に伝わると、原則として一時的に取引ができなくなります。これは、不正な引き出しを防ぐためです。預貯金を引き出すためには、相続手続きが必要になります。また、電気、ガス、水道、電話、インターネットなどの公共料金やサービスも、名義変更や解約の手続きが必要になる場合があります。クレジットカードも同様に連絡が必要です。
どの銀行に口座があるのか、どの会社と契約しているのか、事前にリストにしておくことが役立ちます。
年金の手続き(遺族年金など)
配偶者が亡くなられた方が受け取れる可能性があるのが「遺族年金」です。これは、亡くなった方が加入していた年金制度や保険料納付状況、残された方の年齢や収入などによって、受け取れる年金の種類や金額、受給資格の有無が変わります。
手続きは、お住まいの市区町村役場や年金事務所で行います。遺族年金は請求しないと受け取れませんので、忘れずに確認しましょう。
生命保険の請求
配偶者が生命保険に加入していた場合、死亡保険金を受け取れる可能性があります。加入していた保険会社に連絡し、保険金請求の手続きを行いましょう。保険証券がどこにあるか、事前に確認しておくことが大切です。
相続財産の確認と整理
亡くなられた配偶者の財産(預貯金、不動産、株式、借金など)は、相続の対象となります。これらの財産がどこに、どれだけあるのかを把握することが、その後の生活設計や相続手続きの第一歩となります。
今後の生活設計を考える(少し落ち着いてから)
手続きが一通り落ち着いたら、これからのご自身の生活について、お金の面からじっくり考える時間を持ちましょう。
収入と支出の見直し
一人暮らしになることで、収入と支出のバランスが変わります。
- 収入: ご自身の年金に加えて、遺族年金や生命保険金などが加わる場合があります。新たな収入を正確に把握しましょう。
- 支出: 食費や光熱費など、一人になることで減る支出もあれば、逆に増える支出(例えば、一人でタクシーに乗ることが増えるなど)もあるかもしれません。住居費、医療費、介護費、趣味、交際費など、項目ごとに現在の支出を把握し、今後どのように変化するかを予測してみましょう。
家計簿をつけることは、収入と支出を「見える化」するのに非常に有効です。手書きでも、簡単なアプリでも構いません。ご自身のペースで始めてみましょう。
貯金や資産の管理・活用
現在お持ちの貯金や、相続によって得た財産をどのように管理し、活用していくかを考えます。無理のない範囲で、一部をすぐに使える生活費として手元に置き、残りをどのように管理していくか、専門家などに相談することも一つの方法です。ただし、安全性を第一に考え、よく理解できない金融商品には手を出さないようにしましょう。
将来の備え(医療費・介護費など)
今後必要になる可能性がある医療費や介護費についても、備えを考えておくと安心です。公的な医療制度や介護保険制度について理解を深め、ご自身の貯蓄でどの程度備えられるか、確認してみましょう。
不安を一人で抱え込まないために
配偶者を亡くした後の生活は、精神的にも大きな負担がかかります。お金に関する不安は、その負担をさらに重くする可能性があります。
そのような時は、一人で抱え込まず、外部のサポートを積極的に利用しましょう。
- 公的機関: 年金事務所や市区町村の窓口では、遺族年金の手続きや、高齢者向けの様々な支援制度について相談できます。
- 専門家: 税理士は相続税について、弁護士は相続に関する法的な問題について、ファイナンシャルプランナーは今後の生活設計や資産活用について、それぞれ専門的なアドバイスを提供できます。
- 家族や友人: 親しい人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。
地域の社会福祉協議会などが、生活に関する様々な相談を受け付けている場合もあります。
まとめ
年金生活で大切な配偶者に先立たれることは、考えたくない出来事かもしれません。しかし、もしもの時に備えて、お金に関する基本的な知識や手続きの流れを知っておくことは、残されたご自身が安心して生活を続けていくための大切な準備となります。
この記事でご紹介した内容は、あくまで一般的なものです。ご自身の状況に合わせて、必要な情報を集め、焦らず、一つずつ確認を進めていくことが大切です。不安を感じたら、一人で悩まず、信頼できる人や専門機関に相談してみてください。
「キミのおこづかい会議」は、皆様がお金との付き合い方を考え、より安心して暮らせるヒントを提供したいと考えております。この記事が、皆様の今後の生活を考える一助となれば幸いです。